浮世絵ラボラトリー

判定方法

ここでは浮世絵の価値を科学的、客観的に判定するための方法を紹介します。

小生は浮世絵の専門家ではありません。本業は医学研究のため、科学的な方法を取り入れています。現在、以下に示す非破壊検査方法を用いて、浮世絵にダメージを与えることなく、評価を実施しています。

デジタルマイクロメーター

デジタルマイクロメーター

紫外線ライト

紫外線ライト

実体顕微鏡+検査台
実体顕微鏡+検査台

実体顕微鏡+検査台

パソコン、画像比較アプリ

パソコン、画像比較アプリ

測定パラメータ 判定項目 使用機器
紙の厚さ 制作年代 デジタルマイクロメーター(1/1000mmまで測定可能。精度: 0.001 mm)
蛍光染料の使用の有無 戦後の紙を使用しているかどうか 紫外線ライト (400nmの光源)
澱粉の使用の有無 近代 vs. 現代 顕微鏡 (最高で x400-500程度)
作品状態全般 微細構造の比較 実体顕微鏡+検査台
(調光機能あり)
画像比較 初摺、後摺、復刻版の判定 パソコン、複数の画像比較ソフトウエアの組み合わせ

一方、破壊検査では、電子顕微鏡やHPLCといったサンプル採取 / 処理を必要とする分析機器を使用します。作品の一部を取る必要があるため、浮世絵ラボラトリーでは実施していません(多少なりとも浮世絵に傷をつけることになります)。

なお、年代判定では、炭素同位体の測定が有名ですが、江戸時代のように比較的近い時代に対しては、現在の炭素法の精度では、意味あるデータを得ることはできません(標準偏差が100年程度!)。

以下に実測値および実例を示します。

紙の厚さ(mm)

江戸時代後期 明治復刻版 現代復刻版(平成)
平均 0.114 0.118 0.148
標準偏差 0.011 0.012 0.016
最小値 0.080 0.104 0.117
最大値 0.149 0.145 0.190

現代復刻版と比較すると、江戸時代のオリジナル版と明治時代の復刻版の紙は薄く、江戸時代の和紙の厚さの最小値は、80/1000 mmでした。

これは、触ると本当にペラペラな状態です。

一方、現代復刻版では、最小値および最大値のどちらも最も大きな値を示し、現代復刻版を触ると、明らかに厚みを感じます。

紫外線照射(400nm)

可視光での浮世絵撮影

可視光での撮影
(左:プリンター用紙、右:江戸時代の和紙)

紫外線(400nm)での浮世絵撮影

同じ部位を紫外線(400nm)で撮影

上記は、プリンター用紙(左)と江戸時代の和紙(右)を並べ、可視光および紫外線でそれぞれ撮影した結果です。紫外線を照射すると、プリンター用紙は均一に強い蛍光を発します。これは、発色をよくするために蛍光増白剤が含まれているためです。蛍光増白剤が使用されるようになったのは戦後のためで、蛍光が確認されたならば、戦後の作品(昭和以降)であることの証明になります。

画像分析

画像の微細構造(馬楝摺り vs. プリンター印刷)

江戸時代和紙+浮世絵

江戸時代和紙+浮世絵

現代和紙+プリンター印刷

現代和紙+プリンター印刷

プリンター用紙+プリンター印刷

プリンター用紙+プリンター印刷

上記の写真はx200の拡大図です。

江戸時代の和紙を用いた浮世絵の場合には、染料の粒子が大きいため、多数の「抜け」が観察され、全体に不均一です。一方、プリンターを用いて現代の和紙に印刷した場合には、そのような「抜け」は殆ど観察されません。通常の印刷用紙に印字した場合、端が直線的で、濃度も均一な印字となります。このように文字部分を拡大させることで、浮世絵版画かどうかの判断は可能です。

画像比較

上記は、北斎の代表的な浮世絵を例に、オリジナルと復刻版の比較結果です。

最初に、オリジナルと復刻版の画像を入手します。しかし、撮影条件が異なるため、色には大きな違いがあり、色の比較に基づく真贋判定は、実質的には困難です。画像データを特殊なソフトウエアを使用して、ラインアートに変換します。そして、別のソフトウエアを使用して、復刻版の透過性の調整、着色、そして、二つの画像の重ね合わせをします。結果は、上に示す通りで、パッと見では同じに見える画像でも、微細構造および位置関係では、全体を通して、多くの部分で異なることが目視できます。

もう一つ、事例を紹介します。

ここでは、小生の個人コレクションとボストン美術館所蔵品を比較しました。

全体を通して、ラインが重なっており、二つの画像はほぼ一致しました(注意:画像の解像度の違いのために、ボストン美術館所蔵品の微細構造の一部が、ラインアートで過度に抽出され、それが偽差異のように現れています)。

このように、最新の画像分析テクニックを用いることで、オリジナルと復刻版を見分けたり、個人コレクションの作品が、オリジナルであるかどうかを判断することも可能になります。

浮世絵画像分析サービス

本サービスは、ヤフオクで浮世絵を購入したいが、それがオリジナルか復刻版かを知りたい場合などを想定したものです。判断基準は、オークションページに掲載されている画像と説明文のみのため限界はありますが、多くの場合で、有用な情報の提供が可能です。1回あたりの費用は5,000円です。

画像分析結果データシートの見本

画像とPDFファイルにてご確認いただけます。

総合分析証明書サンプル1
総合分析証明書サンプル2

※画像クリックで拡大画像がご覧いただけます。